ひどい寝汗で目が醒めた。
寝間着兼用のランニングシャツは、バケツの水を浴びたかのようにぐっしょりで、しこたま汗を吸い込んだ敷き布団も、変にひんやりと気持ちが悪い。
ようやく万年床から身を起こすと、頭が割れんばかりに痛んだ。買い置きの鎮痛剤も、この頭痛には全く効果がない。そして手の指のみならず、両の腕全体が中風病みのようにわなわなと震えている。「あれ」を胃の中に流し込めば、即座にこの不快な状態からは抜け出せる。しかし、今日はあいにく「あれ」を切らしている。「あれ」は、表通りに出て自販機に二百円あまりの小銭を落とせば合法的かつ容易に手に入るのだが、小銭入れの中には、何度確かめても十円玉二枚と一円玉が三枚だけ。
顔も洗わず、髭も剃らず、俺は「あれ」を求めて外に這い出す。扉を聞けた途端、真夏の容赦ない強い日差しに目肢を覚え、足がもつれた。ここ数日、「あれ」の他はカップ麺を三つ腹に入れただけなのだから、足に力が入らないのも無理はない。腕時計が電池切れで、時間もわからないが、太陽の高さからして、ちょうど十二時頃だろう。昼飯時のせいか、通りにほとんど人影はない。知り合いと出くわして、借金の催促をされる心配はなさそうだ。
まずは市民生協への坂を下り、自動販売機のコーナーで釣り銭の取り忘れをチェックする。夕パコの自販機に十円玉が一枚残っていたが、これを足しても全財産は三十三円。小銭を落としたふりをして、自販機の下ものぞき込んだが、目に映ったのは大量の綿ゴミだけ。失望が、頭痛と吐き気に拍車をかける。
序章1